清水義範の「私は作中の人物である」は主人公の視点が面白い
1996年に発売された「私は作中の人物である」という本があります。作者は小説家の清水義範という人です。この本は短編小説が10本集めて作られた本ですので、短編によって内容は変わってきますが、そのうちの多くは清水義範独特の視点で書かれた本のためとても個性的で笑えます。まず、一番最初の短編小説である本書のタイトルにもなっている「私は作中の人物である」はなんと冒頭からミミズが主人公として出てくるのです。擬人化した猫が主人公の小説などはあるかも知れませんが、おそらくミミズが主人公として出てくる小説は本書が初ではないかと思います。しかもこのミミズは道路に出て車に踏みつぶされた後のぺちゃんこになって死んだミミズです。ミミズが死亡してその魂が自分の半生について語っており、作者の視点の面白さがうかがえます。
また、それ以外の短編にも名古屋弁を使って書かれたものや「全国うまいものマップ」ならぬ「全国まずいものマップと」いうよくわからない独特の視点で、真面目に不真面目な内容の小説を書いており、笑いが不足している人にはとてもよい一冊です。ただ、独特のいい回しや癖が強いため好き嫌いが分かれるかもしれません。
ありがとう寄稿。
こちらが世に出たのは1970年代と比較的古い作品なのですが、その約40年後の2012年にTBS系列でテレビドラマ化されたことからも分かるように、作品の内容自体には全く古さを感じないものとなっています。
感想・書評「家族八景:筒井康隆」ネタバレ注意・2012年にTBS系列でテレビドラマ化された(レビュー)。 #読書 - みんなのブログ。